自動車産業を支える「ばね」を作り続けて67年。
徹底して品質にこだわる姿勢で、横須賀から世界へ
普段、目にすることは少ないのですが、自動車やエレクトロニクス、精密機器、橋梁やビルディング。発條=ばねは、社会の至る所で使われている重要な部品です。京浜発條は高品質のばねを通してモノづくりを支え、世界中の製品作りに貢献しています。
ばねの設計から製造まで。
他社がまねできない高い技術力が強み
あまり知られていないことですが、ばねはほとんどがオーダーメイドの製品です。「この機械のこの部分に使用するばねを作って欲しい」。顧客の要望に応える最適のばねはどんなものか。素材や強度を考えて図面を描き、試作品を作り、それを機械で製造にするにはどうすればよいか、また考える。知識と技術、そして職人的な勘や繊細さが要求される仕事です。
「ばねは材料に左右される部分が大きい製品で、材料ごとに微妙な調整をしなければいけません。また、スプリングバックという現象も、製造を難しくする一因です。たとえば5ミリ径のばねを作ろうと思った時、5ミリの棒に針金を巻くと、芯から外した時に巻き戻るので5ミリより若干太くなってしまう。では、何ミリの心棒に巻けば正確な5ミリ径の製品が作れるのか。それを考え、微妙な調整を続ける。どの企業でも、誰にでもすぐにできる作業ではないからこそ、長年にわたって技術と知識を培ってきた当社に強みがあると、考えています」と語るのは、代表取締役社長の片平修一さん。祖父が60歳で創業した会社を、2代目である父から引き継いでから約15年になるそうです。
「もちろん、新しい設備を導入して機械化できる部分を増やしてはいます。しかし、それと同時にこうした”匠の技”の継承も大切なことだと考えています」。
難しい製品を作り上げた時の達成感。
そして、命に関わる製品を作っている誇りが仕事の魅力
「ばね職人」と言っても過言ではない繊細な作業を要求される京浜発條の仕事。一人前になるには「3年以上はかかると思います」と、若菜力斗さんは言います。若菜さんは、2008年に高校を卒業してすぐに入社し、ずっとワイパーブレードに使われるばねの製造に携わってきました。
若菜さんが京浜発條を知ったのは、就職活動中の高校3年生の時。偶然見ていたテレビニュースで「日本のばねは世界のトップクラス」と知り、ばね関係の会社を探したところ、地元・横須賀にばねメーカーがあることを知り、興味を持ったのがきっかけでした。
「希望通りに入社させていただいて嬉しかったのですが、私が通っていた高校は普通科だったので、工業的な知識はゼロに近い状態。入社当初は、機械はもちろん、工具の使い方もよく分かりませんでした」
そんな若菜さんを支えてくれたのは、周りの先輩社員たちでした。「できなくてもいいから」と、まずはばねの製造をやらせてくれました。その後、分からなかったところ、できなかったところを一つ一つ丁寧に教えてくれたと言います。最初はミリ単位の調整の力加減が分からずに苦労をしたそうですが、チャレンジを続けさせてくれた先輩たちのおかげで、3年も経つころには一人で仕事を任せられるぐらいにまで、技術を上げ、知識も高めました。
「試行錯誤を繰り返して製品が完成した時には、大きな達成感がありますね。また、自動車のワイパーは、使用中に壊れてしまったら人の命に関わるほど大切なものです。そういう重要なものを作っていることに、誇りを感じています」
ワイパーブレードのばねでは、世界シェア10%超。
マレーシアに続き、メキシコにも工場設立へ
若菜さんも携わるワイパーブレードのばねが、京浜発條の主力商品です。世界シェアは10%超。
「ガソリンエンジンから電気自動車へ変わっても、ワイパーはなくなることはありません。そして、日本では市場規模が縮小してきている自動車産業ですが、世界レベルではまだまだ拡大しているし、今後も成長が見込まれています」と、片平さん。
そうした市場の変化を見据えて、京浜発條は海外展開を開始。2008年にマレーシア工場を設立し、現在はメキシコ工場の設立準備中です。「マレーシアもメキシコも、人々の生活や社会構造が日本とは大きく異なっています。日本というアイデンティティは残しながら、違った社会とうまく融和できる、真にグローバルな会社にしたいと、考えています」と、片平さんは将来展望を語ってくれました。
向上心と積極性があれば
海外で活躍のチャンスも
「ずっと引きばねを作ってきたのですが、今後は他のばねにもチャレンジしたい」と熱っぽく語る若菜さん。それを聞いた片平さんは「若菜さんのような、向上心と技術に対するこだわりを持って仕事に取り組んでくださる方に、もっと入社して欲しいですね」と、嬉しそうです。
また、「今のところ社員の1/4~1/3程度が1度はマレーシアに行ったことがある、というレベルなのですが、もっと多くの社員に海外経験を積んでもらいたい。海外で活躍したいと考えている技術者の方にも、積極的に応募していただきたいです」とも。
匠の技を継承する職人的世界と、グローバル企業としての側面。長く培ったばねの技術を大切にしながらも、「新しい分野にもチャレンジして、常に前進していきたい」という片平さんの経営戦略。伝統と新しさ、堅実さとチャレンジ精神を併せ持った柔軟さが魅力の京浜発條。今後が大いに楽しみな会社です。
求人情報
募集情報 |
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企業情報
社名 | 京浜発條株式会社 |
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住所 | 横須賀市浦郷町5-2931-29 |
電話番号 | 046-865-8391 |
事業内容 | 自動車、エレクトロニクス機器等の精密ばねの設計製造、各種精密金属ばねの設計製造、形状記憶合金素子の設計製造 |
従業員数 | 119人(2017年9月現在) |
ホームページ | https://www.keihin-hatsujo.jp |
プロフィール
京浜発條株式会社
代表取締役
片平修一さん
横浜・横須賀育ち、祖父により1950年11月に創業、戦後の経済成長期に弱電事業より始まり、自動車産業と共に発展する。大学卒業後に渡米し、MBAを取得。現在も家族はシカゴに在住、自動車産業の都市を往来する日々を送る。事業は祖父、父より受継ぎ現在は、海外はマレーシアを拠点にし、世界各地へ向けて自社製品を供給する。現在はメキシコを軸に南米等へ事業拡張を計画中である。
京浜発條株式会社
第一製造課
若菜力斗さん
横須賀市出身、入社1年目。現在は引きばね生産の現場を担当する。周囲の同僚に支えられ技術習得も早く現場へ馴染み一役を担っている。自分の担当してる製品が自動車の主要部品として載り、世界各地で役立っていることに熱い気持ちを語っていた。
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